なぜ多くの飲食店はシフト作成を変えられないのか?Excelや手書き運用を続ける理由と、その見えないコスト
シフト作成は面倒だし、時間もかかる。そう感じているのに、いざ「やり方を変えよう」とはなかなか思えない。ExcelやLINEグループ、手書きでの運用を、なんとなく続けている——。
そんな店長やオーナーは、決して少なくありません。この記事では、なぜシフト作成のやり方を変えるのが難しいのか、その理由を一緒に整理していきます。そして、「変えないこと」にも実はコストがあるという視点を、あらためて考えてみたいと思います。
シフト作成に不満はあるのに、なぜ変わらないのか
多くの店長やオーナーは、今のシフト作成のやり方に何かしらの不満を感じています。毎月のことながら面倒で、思った以上に時間がかかる。それでも、運用そのものを変える人は多くありません。
これは不思議なことのようでいて、実はとても自然なことです。不満があることと、やり方を変えることのあいだには、思っている以上に大きなハードルがあるからです。
今のやり方に慣れている
一番大きな理由は、シンプルに「慣れているから」です。
人間は誰でも、慣れた方法、いま動いている方法を選びやすいものです。これは心理学で「現状維持バイアス」とも呼ばれ、特別なことではなく、誰にでも働く心の傾向です。新しいことを始めるには、エネルギーと不安がともないます。今のやり方で一応まわっているのなら、わざわざ変える理由を見つけるほうが難しい。これは飲食業に限った話ではなく、どんな仕事でも同じです。
つまり、シフト作成を変えられないのは、決して不思議なことではありません。慣れた方法を選びたくなるのは、人として自然な反応なのです。
変えることにもコストがある
ここは公平に見ておきたいところです。やり方を変えることには、たしかにコストがかかります。
新しいツールの使い方を覚える必要がありますし、スタッフにも説明しなければなりません。最初の設定にも手間がかかります。今がギリギリでまわっている現場ほど、「新しいことを始める余裕なんてない」と感じるのは当然です。変えることへのためらいには、こうした現実的な理由があります。これは軽視できません。
今の運用にもコストがある
一方で、見落とされがちなのが、「今のやり方を続けること」にもコストがあるという事実です。
たとえば、毎月のシフト作成では、こうした作業が繰り返されています。
- スタッフからシフト希望を集める
- 期限までに出さない人へ催促する
- 集まった希望を表に転記する
- 希望や人数を見ながらシフトを組む
- 組んだあとの修正に対応する
- 確定したシフトを全員に共有し直す
- 急な欠勤が出たときに代わりを探して調整する
一つひとつは「いつものこと」かもしれません。けれど、これを毎月繰り返しているという事実は、変わりません。今の運用にどれだけの時間が使われているかについては、「Excelでシフト管理する本当のコスト」でくわしく整理しています。
見えないコストは、時間として積み上がる
今の運用のコストが見えにくいのは、それが「お金」ではなく「時間」や「労力」というかたちで支払われているからです。
毎月のシフト作成に費やす時間。希望が集まらないことへの気がかりや、修正のたびに感じるストレス。そして、「この作業はあの人しかできない」という属人化。とくに属人化は、その担当者がいないとシフトが組めないという状態を生み、見えないリスクとして静かに積み上がっていきます。
そもそも飲食業のシフト作成は、ポジションやスタッフの条件など考慮すべきことが多く、本質的に時間のかかる作業です(くわしくは「飲食業のシフト作成はなぜ難しいのか」をご覧ください)。だからこそ、その負担が毎月積み重なっていきます。
シフト作成は「目的」ではなく「手段」
ここで一度、立ち止まって考えてみたいことがあります。そもそもシフト作成は、何のためにやっているのか、ということです。
シフトは、お店を滞りなく営業し、スタッフに気持ちよく働いてもらうために欠かせないものです。その意味で、シフト作成は店舗運営に必要な作業であることは間違いありません。けれども、それはあくまで「お店をうまくまわすための手段」であって、シフトを作ること自体が目的ではないはずです。
ところが現実には、その手段であるはずのシフト作成が、毎月まとまった時間と労力を奪う「負荷」になっていることが少なくありません。手段に時間を取られすぎて、本来向き合うべきお店づくりの時間が削られていく。ここに、今の運用を見直す意味があります。手段は、軽くできるなら軽くしたほうがいい。そのほうが、本来の目的に使える時間が増えるからです。
変えることが目的ではない
ここで大切にしたいのは、「新しいツールを使うこと」そのものは目的ではない、ということです。
目的はあくまで、店舗運営を少しでも楽にすること。シフト作成にかかる時間や労力を減らして、その分を本来やりたいことに向けられるようにすること。ツールを変えるかどうかは、そのための手段の一つにすぎません。だから、「流行っているから」「みんなが使っているから」という理由で焦って変える必要はありません。
少しずつ改善するという考え方
やり方を変えると聞くと、すべてを一気に入れ替える大ごとのように感じるかもしれません。けれど、必ずしもそうではありません。
たとえば、まずはシフト希望の回収だけを見直してみる。あるいは、シフトを組む作業の負担だけを軽くしてみる。そんなふうに、負担の大きいところから少しずつ改善していく考え方もあります。一気に変えなくていいと思えれば、見直しのハードルはぐっと下がります。
変化のコストが心配で動けないなら、まずは小さな一歩から。それで十分です。
まとめ:続けることにも、コストがある
シフト作成のやり方を変えられないのは、自然なことです。慣れた方法を選びたくなるのは誰にでもあることですし、変えることに現実的なコストがあるのも事実です。
ただ、同じように「今のやり方を続けること」にも、時間や労力というかたちでコストがかかっています。どちらが良い悪いではなく、両方にコストがあることを知ったうえで、ときどき立ち止まって今の運用を見直してみる。それだけでも、シフト作成に追われる時間を、お店をよくするための時間へと変えていくきっかけになるはずです。
よくあるご質問
Excelでシフト管理するメリットは何ですか?
導入費用がかからず、多くの人が操作に慣れていること、表計算の自由度が高くお店ごとのやり方に合わせやすいことが挙げられます。小規模でスタッフが少なく、変更も多くないお店であれば、Excelで十分まわることもあります。
シフト管理のやり方を変えるタイミングはいつですか?
毎月のシフト希望の回収・催促・作成・修正・共有・欠勤対応に時間がかかっていると感じたときや、特定の人しかシフトを組めない状態(属人化)が気になり始めたときが、見直しを検討する一つのタイミングです。
飲食店でシフト管理システムは必要ですか?
必ずしも全ての店舗に必要というわけではありません。今の運用に大きな負担を感じていなければ、無理に変える必要はありません。一方で、シフト作成にかかる時間や労力が積み重なっていると感じる場合は、運用を見直す価値があります。
シフト作成に時間がかかる原因は何ですか?
ポジションやスタッフごとの勤務条件、公平性など考慮すべき条件が多いことに加え、希望の回収・催促・転記・修正・共有といった作業が毎月繰り返し発生するためです。
手書きやExcelでも問題ないですか?
小規模で変更が少ない運用であれば、手書きやExcelでも十分に機能することがあります。大切なのはツールの種類ではなく、今の運用にかかっている時間や労力に見合っているかどうかです。負担が大きいと感じるなら、見直しを考えるサインかもしれません。
シフト運用を変えるには、一度にすべて変える必要がありますか?
いいえ。シフト希望の回収だけ、シフトを組む作業だけ、といったように、負担の大きい部分から少しずつ改善していく方法もあります。一気に変える必要はありません。