飲食業のシフト作成はなぜ難しいのか?人数を埋めるだけでは、良いシフトは作れない
毎月のシフト作成に、思った以上に時間がかかっている。何度も組み直しているのに、なかなかしっくりこない。そんな感覚を持っている店長やオーナーは少なくありません。
その背景には、飲食業のシフト作成そのものが構造的に複雑だという事情があります。この記事では、なぜ飲食業のシフト作成が難しいのか、その理由を一つずつ整理していきます。
シフト作成は「人数合わせ」ではない
シフト作成と聞くと、「必要な人数を各時間帯に割り当てる作業」だとイメージするかもしれません。たしかに人数をそろえることは前提ですが、それだけでお店がうまく回るわけではありません。
同じ「3人」でも、その3人が誰なのかによって、現場の回り方はまったく変わります。シフト作成の本当の難しさは、人数を埋めた先にある「誰を、どこに、どう組み合わせるか」という部分にあります。
ポジションを考慮する必要がある
飲食業の現場には、ホール、キッチン、ドリンクといったポジションがあります。お店の業態によって呼び方や区分は変わりますが、求められる役割が分かれているという点は共通しています。
たとえば、ホールに人が偏っていてキッチンが手薄なら、料理の提供が追いつきません。逆もまた然りです。必要な人数がそろっていても、ポジションのバランスが崩れていれば現場は回らない。同じ人数でもスムーズに回る店舗と回らない店舗があるのは、このポジション配分の差によるところが大きいのです。
スタッフごとのスキルを考慮する必要がある
ポジションが埋まっていても、そこに入る人のスキルによって現場の安定感は変わります。
入ったばかりの新人ばかりの時間帯と、ベテランが一人いる時間帯では、同じ人数でも余裕がまったく違います。新人を育てるには教えられる人が近くにいる必要がありますし、閉店作業を任せられる人がいなければ、その時間帯のシフトは成立しません。
つまり、シフトを組むときには「この時間帯に、この組み合わせで現場が回るか」というスキルの観点を、頭の中で常に確認していることになります。これは数を数えるだけでは決して見えてこない部分です。
雇用形態や勤務条件を考慮する必要がある
飲食業では、さまざまな立場のスタッフが一緒に働いています。学生アルバイト、主婦・主夫のパート、正社員。それぞれに働ける時間帯や曜日の傾向が異なります。
さらに、週あたりの勤務時間の上限、連続勤務の上限、提出された希望休といった条件も重なります。学生であれば試験期間、家庭があるスタッフであれば送り迎えの時間など、現場ごとに事情はさまざまです。
これらの条件は一つひとつは単純でも、すべてを同時に満たそうとすると、組み合わせは一気に複雑になります。シフト作成に時間がかかる大きな理由の一つが、この「条件の掛け算」です。
公平性も重要な要素
見落とされがちですが、公平性もシフトの質を左右する重要な要素です。
特定の人にばかり忙しい時間帯が集中していたり、逆に一部の人だけが入りやすいシフトになっていたりすると、スタッフの不満につながります。こうした不公平感は、表に出にくいまま積み重なり、最終的には離職の原因になることもあります。
一人ひとりの希望や事情をくみ取りながら、全体としてのバランスも保つ。この両立は、人数を割り当てるだけの作業とはまったく別の難しさを持っています。
なぜ完全自動化が「飲食業にフィットしない」のか
ここまで見てきたように、飲食業のシフト作成には数多くの条件が関わります。だったら、すべてを自動で処理してしまえばいいのでは——そう考えたくなるかもしれません。
しかし、飲食業の現場では、完全な自動化はむしろうまくフィットしません。理由は、現場には数値やルールに落とし込みきれない要素が多いからです。
たとえば、急な体調不良や家庭の事情といった突発的な出来事。お店ごとに積み上げてきた独自の運用ルール。スタッフ同士の相性や人間関係。新人がいまどの段階まで育っているかという教育の状況。こうした要素は、その場の状況や人の判断に依存していて、あらかじめすべてを条件として書き出すことはできません。
完全自動化は、こうした「割り切れない部分」を吸収しきれません。だからといって、ツールに意味がないわけではありません。むしろ、人が判断すべき部分を人に残し、機械が得意な部分を機械に任せる——その役割分担こそが、飲食業の現場に合ったやり方なのです。
現実的なのは、時間のかかる部分を効率化すること
では、どう向き合えばいいのか。現実的なのは、シフト作成のすべてを自動化しようとするのではなく、時間のかかる部分を効率化し、最後の判断は人が行うという考え方です。
シフト作成には、機械的に処理できる部分と、人の判断が欠かせない部分が混在しています。スタッフからの希望を集める、未提出の人に声をかける、条件をふまえてたたき台を組む——このあたりは仕組みで効率化できます。一方で、現場の空気を読んだ最終調整や、突発的な事情への対応は、店長やオーナーだからこそできる部分です。
時間のかかる前半の作業を効率化できれば、その分のエネルギーを、本当に人の判断が必要なところに集中させられます。完全に任せきるのでも、すべてを手作業でやるのでもなく、両者のいいところを組み合わせる。これが、飲食業のシフト作成に無理なくなじむ形だと考えています。
まとめ:飲食業のシフト作成は、構造的に複雑な作業
飲食業のシフト作成が大変なのは、ポジション、スキル、雇用形態、勤務条件、公平性——考慮すべき条件が多く重なり合っているからです。一つひとつは単純でも、すべてを同時に満たそうとすると組み合わせは一気に複雑になります。時間がかかって当然の作業なのです。
そして、その複雑さに向き合ううえで大切なのは、完全自動化を目指すことではなく、効率化と柔軟性のバランスを取ることです。時間のかかる部分は仕組みにまかせ、人にしかできない判断は人が担う。その役割分担ができたとき、シフト作成に追われる時間は、お店をよくするための時間に変わっていきます。
よくあるご質問
飲食業のシフト作成はなぜ難しいのですか?
必要な人数をそろえるだけでなく、ポジションのバランス、スタッフごとのスキル、雇用形態や勤務条件、公平性など、考慮すべき条件が多く重なり合っているためです。これらを同時に満たそうとすると組み合わせが複雑になり、時間がかかります。
シフト作成で考慮すべき項目は何ですか?
主に、各時間帯の必要人数、ホールやキッチンなどのポジション配分、スタッフのスキルや経験、雇用形態ごとの勤務条件(週の勤務上限・連勤上限・希望休など)、そしてスタッフ間の公平性です。
シフト作成は自動化できますか?
希望の収集やたたき台の作成など、時間のかかる部分は仕組みで効率化できます。一方で、突発的な事情への対応や現場の状況をふまえた最終調整は人の判断が必要なため、すべてを完全に自動化するのは現実的ではありません。
なぜ完全自動化は飲食業に向かないのですか?
飲食業の現場には、急な欠勤、店舗独自の運用ルール、スタッフ同士の相性、教育の進み具合など、数値やルールに落とし込みきれない要素が多くあります。これらは人の判断に依存するため、完全自動化では吸収しきれません。
公平なシフトとは何ですか?
特定の人にばかり負担や良い条件が偏らず、スタッフそれぞれの希望や事情をくみ取りながら、全体としてバランスが取れている状態を指します。公平性が保たれていないと、不満や離職につながることがあります。
飲食店の人員配置で重要なことは何ですか?
人数をそろえることに加えて、ポジションのバランスと、その時間帯に現場が回るスキルの組み合わせを考えることです。同じ人数でも、誰がどのポジションに入るかによって現場の回り方は大きく変わります。